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片山邦雄の「紆余曲折」


●バックナンバー 2001/12/27

 


第12号

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      片山邦雄の「紆余曲折」    2001/12/27

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今週の目次

◆連載コラム:第十三回 「グル・クリパ」  
 
◆編集後記

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◆連載コラム: 第十三回 「グル・クリパ」



「私が従ってきた道は、グル・クリパと呼ばれるものです。 それは、グル(師)の恩寵の道を意味します。 わたしの師は1973年に亡くなりましたが、彼が死んでからも、 わたしはずっと恩寵をあたえられているという感覚を持って生きてきました」


 
 11月にマイアミで開催されたヨーガ・コンファレンスの講演で、 ラムダスはいつものように車椅子で壇上にあがると、 開口一番、聴衆に向かってこう語りはじめた。



「今では、彼は、わたしにとって、 子どもたちがよく持つような想像上の友だちです(笑)。 賢 くて、慈愛にあふれ、いたずら好きの、愛おしい友だちなのです。 わたしはいつでも彼を連れ歩いています」



  ラム・ダスによると、グル・クリパとは、グルの恩寵にひたることである。 そして、その恩寵によって、ひとは神へとみちびかれるという。 それは一種の契約であり、 グルが人びとに恩寵をおくり、人びとはグルに信仰をおくる。 でも、恩寵がすぐ目の前にあったとしても、 そのひとに信仰がなければ恩寵は見えないという。



「(はじめてわたしが彼に会ったとき) わたしは、人間のなかに3番がありうるのだと思いました。 それは、まるで肉体をまとった神を見るようなものでした」



  ラム・ダスがインドで出会ったニーム・カロリ・ババ(通称マハラジ)の 出生については、ほとんど何も知られていない。 その名前も、ニーム・カロリという村にしばらく 住んでいたことからつけられたものだ。 彼は、講話や説教といったものをいっさいせず、 村から村へ、山から平地へ、寺院から個人の家へ、 そして密林のアシュラムへと放浪をつづけていた。



  持ち物といえば、一枚の毛布のほかには、 寒さをしのぐ下着や靴下、セーターをときおり身につける以外は、 簡素なドーティ(男性の下半身を覆う布)だけをまとっただけだった。 そして、木製のベッドの上に寝ころがっては、 あとを追ってひっきりなしに訪ねてくる人びとに、 食べ物や助言などをあたえた。



 あるとき、ラム・ダスが師に「神を見るにはどうしたらよいですか?」と質問したことがあった。 すると、師は「人びとに奉仕しなさい」と言った。 秘密のマントラか何かを期待していたラム・ダスは、通 訳が質問を間違えたのだと思い、「悟りを得るにはどうしたらよいですか?」ともう一度、聞き直した。 すると今度は、「人びとに食べ物をあたえなさい」といわれたという。



  その一方で、ニーム・カロリ・ババは誰にたいしても、 自分がそのひとのグルであることを認めなかったという。
「マハラジは誰に対しても、簡単には明け渡しをさせませんでした。 マハラジは絶えず彼自身に関する疑惑の種をまきつづけ、 私たちが育てつつあった弱々しい信仰を切り落としたからです。 それでも、私たちは、自分たちの疑いが深まりゆく信頼のなかに 消えていくのを見つめていました」(『愛という奇蹟』より)

 

 前々回に書いたサンディ・サッサンの会場で、 まだ若い女性がラム・ダスに、 どうしたらそのグルが本当に信頼できるひとだとわかるのか、 と質問したことがあった。その女性は、 インドであるスワミ(ヒンドゥー教の師に対する呼称)と出会い、 そのスワミの常人にはない能力に、 つい深く信頼してしまったという。 ところが、その後、失望することがあり、それ以来、 ひとを信頼することが怖くなってしまった、というのだった。



  ラム・ダスはこう語る。 「まず第1に注意しなくてはならないのは、 スピリチュアリティとパワー(超能力)とは、 何も関係がないということです。 超能力をひけらかすひとたちがいますが、 超能力というのは、別 の次元からやってくるもので、 ひとはその次元を旅することができます。 しかし、だからといって、そこを旅する人びとが 一者(神)を悟っているということにはならないのです」



「あなたがグルを信頼するとき、 あなたは自分の内側からグルを信頼しなくてはなりません。 ひとがいうことは関係ありません。 インドでは、『神とグルと自己(本来の自分)とはひとつである』 と言われています。ですから、あなたは、 自分のなかにある、もっとも深いものを信頼するのです」



  ラム・ダスの講演は、それが医療関係者のシンポジウムであろうと、 ユダヤ教会の集会であろうと、彼がインドにいたときに、 師とのあいだで経験した様々な話が語られる。 ラム・ダスによれば、その経験のほとんどは、 「神はコメディアンのようなものである」ということを象徴しているという。 たとえば、次のような話がある。



「あるとき、私たちは南インドのシヴァ寺院にいました。 それから、北インドの寺院にいるマハラジに会いに行こう ということになったんです。 マハラジは以前、わたしに、『ヴリンダーバンでおまえに会う』 と言ったことがありました。 それで、私たちはヴリンダーバンを通 っていくことになりました。

 

 ヴリンダーバンに行く途中、私たちは、20分、交通渋滞に巻き込まれました。 わたしたちが寺院に着くと、小さなフィアットが道を走ってやってきました。 そして、その車から、マハラジが降りてくると、 私たちを無視して寺院に入っていったのです。



  運転手に話を聞くと、前の晩はずいぶん遠く離れた町にいたようです。 それで、一晩中、車を走らせて ヴリンダーバンまでやってきたということでした。 ところが、ヴリンダーバンの近くまで来たときに、 マハラジは、運転手にむかって20分待つようにと言ったというのです(笑)」



  ラム・ダスは、つねに、師の存在をかたわらに感じつつ生きてきたという。 講演が終わりに近づくと、ラム・ダスは、 もう一度、聴衆に向かって、こう語りかけた。



「みなさんは、アーサナ(ヨーガの体位)を神に捧げています。 アーサナというのは、神との会話です。 アーサナを神との会話にするためには、 神に対する信仰をもつ必要があります。誰かと話をするときには、 その人がそこにいるという信仰がないとできないでしょう。 その信仰が恩寵をもたらします。



  たとえば、わたしのグルはこう言いました。 『わたしのことを考えるならば、わたしはそのひとのためにそこに行く』と。 わたしのグルは、超越的な存在ですが、 わたしがこう言っても、みなさんは本気にしないでしょう。 彼は、どんなひとであっても、 『もしわたしのことを考えるならば、いつでもそばにいく』 と言っているんです。もし、あなたに信仰があれば……」



  ラム・ダスが言葉を止めると、会場には沈黙が流れた。 彼は、目をとじたまま、じっと上を向いて座っている。 そして、しばらくして、目をあけると、 まるでどこか遠い世界からもどってきたかのように、 にっこりと微笑んだ。

 
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◆編集後記



 今日、日本で「信仰」というと、神仏にすがるというイメージがつきまといます。 しかしながら、信仰にあたる英語には「フェイス」と「ビリーフ」があり、 ラム・ダスはこの2つを区別して使っています。


 彼によれば、「ビリーフ」というのは、エゴの領域である マインド(思考)がおこなうもので、 たとえば、「〇〇が正しい」から信じなさいと言われて信じたり、 頭で無理やり信じ込むといったあり方にあたるようです。


  これに対して、ラム・ダスが信仰という意味で用いる「フェイス」とは、 頭や感情で信じようとするのではなく、 そのひとの存在の深みにおいて、否定しようのないものとして、 いわば自然なプロセスとしてわき上がってくるもののようです。 ですから、信じようとしても、必ずしも信仰を持てるとはかぎらないのです。

 
 あるとき、ラム・ダスは、「どうしたら強い信仰をもてるのか?」と問われて、こう答えました。「信仰は宇宙の恩恵として存在しています。信仰は伝染するものです。だから、あなたはそれを見ればいいのです」




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●片山が共訳した『愛という奇蹟』(ラム・ダス編著)については、パワナスタ 出版のホームページをご覧ください。

http://www.pawanasuta.com/


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□発行者 片山邦雄 mailto:kkatayama@gol.com
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□発行システム インターネットの本屋さん「まぐまぐ」  http://www.mag2.com/
□マガジンID 0000058263


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