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片山邦雄の「紆余曲折」


●バックナンバー 2002/1/21

 


第14号

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      片山邦雄の「紆余曲折」    2002/1/21

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今週の目次

◆連載コラム:第十五回 「死と死を超えるもの」  
 
◆編集後記

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◆連載コラム: 第十五回 「死と死を超えるもの」



 アメリカでは、ここ数年、医療の世界でも スピリチュアリティに関する関心が急速に高まっている。 1992年には、スピリチュアリティと医療に関する公式の教科科目をもつ医学部はわずか一つだったが、現在では、 アメリカの70以上の医学部がスピリチュアリティと医療に関する教科科目をもっており、 これらの科目のほとんどは必須科目になっている。



  昨年11月下旬、オハイオ州のクリーブランドにあるメトロ病院では、 「ライフ・ケアの終わり、旅の続き」と題された、死をテーマにしたシンポジウムが開かれた。 講師のひとりは、ジョージ・ワシントン大学医学部で、 医学生にスピリチュアリティ教育のプログラムを実施している助教授、 もうひとりは、直感やイメージ誘導において国際的に著名なサイコセラピスト、 そして三人目がラム・ダスだった。



  「初めてわたしがインドに行ったとき、わたしはベナレスに行きました。 そこはヒンドゥー教徒が死を迎える場所で、人びとが河岸で焼かれていました。 わたしは、ひどい病気を患った人びとが道端にいて、死を待っている光景を見ました」



  最初にラム・ダスは、ホールに集まった三百人ほどの医師や看護婦、 ソーシャルワーカーなどの聴衆に向かって、インドでの体験を語りはじめた。



  「その後で、わたしは師のいたヒンドゥー寺院にしばらく滞在しました。 すると、わたし自身が変わっていきました。 次にベナレスに行ったときは、人びとがポケットにトラベラーズチェックを入れている わたしことを憐れみをもって見ているのがわかりました。 彼らはわたしをお腹をすかせた亡霊のように見ていたのです。 前に来たときは、わたしはそのことに気づきませんでした。 わたしのなかの認識が変わったのです。彼らはわたしの知らない何かを知っていました。 彼らはわたしの魂がいかにやせ細っているかを見ていたのです」



  その後、1970年代に西欧社会に戻ったラム・ダスは、 アメリカでエイズ患者や癌患者など死を前にした人びとに、 死とは、新しい意識に移行するプロセスである ということを伝える「ダイイングプロジェクト」を開始する。 そして、いまでも、ラム・ダスは、医師や看護婦、ホスピスの人びとなどに、死について語る機会が多い。 ある会場で、どのように死にたいして準備をすべきかと問われ、 ラム・ダスは次のように答えた。



  「死の瞬間は、私たちがこの人生で迎える最大の変化になるはずです。 もちろん、その変化にあっても穏やかでいるための訓練をすることができます。 魂にアイデンティファイするというのも、そのためのいい訓練です。 というのも、魂は死なないからです。エゴだけが死にます。 エゴは死を深刻にとらえますが、魂は死を、 興味深い本の一章の終わりのように見ているのです」



  「死における変化というのは、ある環境から別の環境への変化で、 この肉体から別の形態への変化です。 そして、あなたは自分がこういう存在だと思いこんでいたものから変わります。 エゴから魂へと変わるのです。しかし、死ぬまで待つ必要はありません。 生きているあいだに、あなたはエゴから魂へと アイデンティティを変えることもできるのです」



  「死に際して、みなさんがもつ3つの困難があります。 ひとつは、死を予期することによる痛みです。ほとんどのひとはこれを怖れています。 しかし今日では、そのような痛みを軽減する薬があります。 一方で、その痛みは信じられないほど有益なもので、それは『きびしい恩寵』です。 ふたつめの痛みは、実際の死です。 これにたいしては、『自分は誰か』という問いを発することで準備できます。 三つめは、死後に起こることです。これについては、 たとえば『チベット死者の書』のような本を読んだりすることができます」



  では、死を前にした人びとにたいしては、どのようなケアが可能なのだろうか。



  「あなたが、もし死に逝く人びとを愛していれば、 あなたは彼らを助けることができます。 真実の愛は、2つのハートのつながりで、 魂と魂とをつなげます。 そして、魂のつながりのなかで、もしあなたが、 死を超えていけるように助けてあげたいと思うならば、 あなたが知っていることを彼らに伝えてあげてください。 あなたは、魂として彼らに語ることができるのです 」



  死についてラム・ダスが語った、ひとつの挿話がある。 それは、ラム・ダスの師、ニーム・カロリ・ババ(マハラジ)の逸話だ。

 

 あるとき、師がダルシャンをしていると、 そこにひとりの帰依者の召使いがやってきた。 その召使いが「わたしの主人が死にかけています。 何か主人にあたえてくださいませんか」と言うと、師はバナナを彼にあたえて、こう言った。 「このバナナを砕いて食べさせなさい。すぐによくなる」 。召使いは急いで家に戻った。 そして、バナナをあたえるとすぐに、彼の主人は亡くなった。



  ラム・ダスはこの挿話を語るとき、 いったい何が「よくなった」のだろうか、と問う。 この場合、師が助けたのは、そのひとの命ではなく、 死を超えてつづく魂のほうだったのだろうか。



 
  私たちが未来にたいして抱くほとんどの怖れは実現しないが、 いちばん怖れている死だけは唯一の例外で、それは必ず誰の身にもやってくる。 ある会場で、自分の愛する人びとが亡くなるのが怖いと語ったひとに、 ラム・ダスはこう言った。



  「あなたは人びとが逝ってしまったと思っているでしょう。 あなたには、それがどういうことかわからない。 というのも、たとえば、私たちはみんな第四学年にいて、 そのうちの何人かが卒業して第五学年になっていくようなものだからです。 私たちは、涙を流し、逝かないでくれと言います。 でも、彼らは逝ってしまうわけではないのです。愛するひとがいて、彼らが死んだとしても、彼らはまだここにいるのです。 もし、あなたが彼らを愛していれば、その愛は魂のものです。 というのも、愛は魂のなかにあるからです」



  私たちは人生のなかで、何度か、家族や友人、 大切な存在を亡くすという経験をする。 ラム・ダスの講演会場では、 夫や妻、子どもなどを失った人びとが、ラム・ダスにいろいろと質問することも多い。 そういう人びとにむけて、彼はこう語りかける。



  「愛するひとのためにロウソクをつけて、その愛を強めてください。 愛について考えることはよくありません。ただ愛を感じてください。 そのためには何よりも、その存在がそこにいるという信仰が必要です。 するとあなたのマインドは、とても静かになるはずです。 ただ、彼らとともにいることです。何もしてはいけません。 ただ、いっしょにいるのです。 それはあたかも、真っ暗な部屋のなかに誰かが入ってきて、 姿は見えないけれど、誰かがそこにいるというような感じです。 それはプレゼンスです。あなたは、彼らのためにそこにいます。 彼らとともに、ただそこにいるのです」

 
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◆編集後記



 ラム・ダスの講演で、 脳卒中の発作を起こしたとき、このまま肉体から離れるか、 それとも引き返して戻るか、という決定を下すような瞬間があったのか、 と質問したひとがいました。 するとラム・ダスは、そのときの状況を思い出しながら、こう語りました。



  「菩薩に促されて戻ってきたと答えたいところなんですが……(笑)。 残念ながら、そういう経験はしませんでした。 わたしは自分が死にかけているとは知らなかったのです。 というのも、まわりの人たちはみんなわたしが 死にかけているのを知っていましたが、 誰もわたしにそう言わなかったからです。 わたしが覚えているのは、病院のなかを運ばれているときに、 自分が天井のパイプの数を数えていたことだけです(笑)。



  ですから、決定を下したということは覚えていません。 決定をしたとしても、それはもっと無意識的なプロセスでしょうね。 かつて、わたしの師はこう言いました。 『おまえの死は、一瞬、早くも遅くもなくやってくる 』 。それは、わたしが死ぬときではなかったのです」





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●片山が共訳した『愛という奇蹟』(ラム・ダス編著)については、パワナスタ 出版のホームページをご覧ください。

http://www.pawanasuta.com/


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□発行者 片山邦雄 mailto:kkatayama@gol.com
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□マガジンID 0000058263


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