第16号
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片山邦雄の「紆余曲折」 2002/2/23
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今週の目次
◆連載コラム:第十七回 「疑い」
◆編集後記
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◆連載コラム: 第十七回 「疑い」
かつてラム・ダスがインドとアメリカを往復していたとき、
デリーの空港に着いて飛行機の扉が開くと、 一瞬、インドの匂いや空気にたじろいだという。
彼はこれから直面しなければならない、 経済的貧困や衛生状態などに対して身構えたのだ。
だが、しばらくインドに滞在してからアメリカに戻るとき、 ニューヨークの空港に着いて飛行機の扉が開くと、
やはりラム・ダスは身構えた。 というのも、インドでは、周りにいた人びとの多くが、
自らの根源を魂とみなしていたのに対し、 アメリカでは、ほとんどの人びとが、
エゴにアイデンティファイしていたからだ。
われわれの社会のなかにも、様々な経験を通じて、 このエゴ的な世界認識がじつは相対的なものであって、
われわれ個々の本質は、この身体やエゴにはとどまらないということに
気づきはじめるひとがいる。 しかし、そのような気づきの経験が何度かあったとしても、
それらは文化的には様々な逆風にさらされざるをえない。
というのも、れわれの実際の社会、あるいは社会のマジョリティが依拠する現実のシステムのほとんどが、
このエゴ的な世界認識に基づいて機能しているからだ。 だから、たとえば、「魂」と呼ぶような、エゴとは異なる領域があることに気づきはじめたひとも、
自分が経験した出来事やそのときの意識状態に対して、 果たしてそれは本当にそうだったのか、と疑いを抱くことがある。
このような疑いは、ラム・ダスの講演を聴きに来る人たちにとっても、非常に興味深い問題であるようで、それゆえ、「疑い」がさまざまなかたちで話題になる。以前、
ラム・ダスは、疑いが生じる理由について、こう語ったことがある。
「疑いと怖れは、ともに無知に根ざしています。 この場合の無知とは、あなたが宇宙から分離しているという考えです。
生まれたとき、あなたは分離してはいません。 しかし、あなたは誕生すると、
自分が宇宙から分離しているという考えによって訓練を受け、 自分が分離した存在であるということを学びます。
そして、あなたはあらゆるものとの一体感を失っていくのです」
ラム・ダスによれば、私たちは生まれたときは、 宇宙とまだ一体化しているという。
ところが、私たちを取り巻く文化的な環境によって、 ソフィストケートされ、社会化された個人として扱われるようになると、
すぐに一体感から切り離され、 小さくて忙しい存在になってしまう。そして、私たちは、自分の外側だけではなく、
内側に広がる広大な空間にもおびえるようになっていくという。
やがて、分離した個人としての私たちの人生は、 怖れに方向づけられた行動によって構成されるようになっていく。
私たちは、自分が安全だということを確認しようとするが、 自分のことを分離したちっぽけな存在だと思っているかぎり、
十分に安全であるとは思えない、とラム・ダスはいう。
「あなたが安全だと思える唯一の瞬間は、 あなたがスピリットのなかへ、一者性のなかへと戻ったときです。
そこでは、あなたは、自分が一者であると同時に、 分離した存在であるということがわかります。
怖れというのは、分離が起こるときにはじまります。 そして、あなたがいったん分離した存在になると、あなたのエゴは、
あなたがすべての一部であるということに対して、疑いを抱かせます。
なぜなら、あなたの分離したエゴにとって、 あなたがすべての一部であるということを理解することは、死を意味するからです」
私たちのエゴ──すなわち、「わたし」とか、「自己」という概念──は、
ゲームの絶対的なリーダーとしての自分自身を守るために、 自分が全体の一部であるという事実に目覚めることを阻止するというのだ。
そして、そのために、エゴが用いるトリックのひとつが、「疑い」だという。
では、このような疑いに対しては、どのように接するのがよいのだろうか。
ラム・ダスはこう語る。
「最初のアドバイスは、自分の疑いとともに座るということです。
疑いを認めて、それが存在していることに気づいているということです。
そして、実践をつづけます。疑いがまわりをうろつくままにさせておきます。
疑いを打ち消すことはできません。 もはや疑いはない、と信じようとした瞬間に、
それは戻ってくるのです」
「結局のところリラックスするしかありません。 そして、一種の光、ユーモアのセンスを、
あなたの問題に関してもちつづけてください。 そのほうが疑いがしっかりと終わるのです。
疑いを、スピリチュアルな道の同伴者とすることです」
ラム・ダスによれば、スピリチュアルな道というのは、 何度も何度も浮かんだり沈んだりを繰り返すという。
最初に目覚めたときは、道は、山を登るような感じになるが、 ときに道は、山頂が見えなくなるために、
登っていると山から遠ざかってしまったように思えるときもある。しかし、だからといって、疑いのすべてがマイナスというわけではない。
「疑いのプロセスというのは、 あなたの根源や、真実との関係やつながりにおいて、
あなたを強いて検証させつづけます。 それは浄化の火でもあります。
疑いは、あなたがこの人生で自分自身と向きあう必要がある、という事実に、
あなたを直面させつづけます。 疑いとか、欲望、怖れといったものは、
それらがあなたのカリキュラムであるという意味では、 プラスの面
をもっているのです。
あなたは、疑いをとおして、自分を吟味し、 より深くへと探求せざるをえなくなります。
疑いによって、あなたはぐらつくかもしれませんが、 あなたはそれに触れることで、
自分の気づきを深めることもできます。 疑いを抱くようになるというのは、
非常に大きな痛みをともないますが、 それがあなたを前に駆り立てるのです」
これまでも何度かこのコラムでも触れてきたが、 ラム・ダスは脳卒中の発作のあとで、
師の恩寵の外に放り出されたように感じたことがあった。 彼には、師の恩寵のなかで人生を歩んでいる感覚があったが、
発作が恩寵とは思えなかったのだ。 発作によって、彼は疑いをもつようになったという。
「発作によって、わたしの信仰は失われ、 疑いによって、わたしのハートは硬くなりました。
それからわたしは疑いを乗りこえて、発作を解釈し直し、 『きびしい恩寵』と呼ぶようになりました。
最近、わたしは娘を亡くした女性と話をしながら、 『きびしい恩寵』がどういうものであるかについて考えました。
つまり、それは、恩寵があなたの世界観をゆさぶるほどに 十分強いということなのです。あなたが牢獄から、今生の肉体から出ていく準備ができるようになるまで、
それは、あなたをゆさぶるのです」
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◆編集後記
先日、キルタンを歌いながら、アメリカで演奏活動をしている
クリシュナ・ダスKrishna Dasのコンサートを聴く機会がありました。
彼は、インドから戻ったラム・ダスのところに集まった若者のひとりで、
その後、師となるニーム・カロリ・ババのところを訪ね、 3年ほどインドに滞在するあいだにキルタンを学びました。
彼は、アメリカでこれまでに4枚のCDとライブ・ビデオを発表しています。
キルタンとは、インドの神々の名前などを短いフレーズにして、
それに簡単なメロディーをつけた歌ですが、 何度も何度もその名を繰り返しながら、
神とひとつになるまで、その歌をうたいます。 クリシュナ・ダスのコンサートには、
老若男女いろんな年代のひとが集まっていましたが、 キルタンが一曲、終わるたびに、
クリシュナ・ダスの眼には、涙があふれていました。
クリシュナ・ダスは、彼の師について、こう語りました。
「はじめてわたしが師に会いにいったとき、リンゴを持っていきました。
わたしは、木のベッドのうえの、師の横にリンゴをおきました。
すると、彼はそれを手に取り、そこにいる誰かにやってしまいました。
そして、『神をもっていれば、何ひとつ必要ない』と言ったのです。
(わたしの師については)超能力とかそういう話は、まったく的はずれなことです。
というのも、私たちは、それまで知らなかったようなかたちで 自分のことを愛してくれるひとを見いだしたからです。
彼が、私たちにあらわしたのは、愛というものの真実の姿でした」
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●片山が共訳した『愛という奇蹟』(ラム・ダス編著)については、パワナスタ
出版のホームページをご覧ください。
http://www.pawanasuta.com/
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□発行者 片山邦雄 mailto:kkatayama@gol.com
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