メールマガジン
片山邦雄の「紆余曲折」


●バックナンバー 2002/3/25

 


第17号

=========================================================

      片山邦雄の「紆余曲折」    2002/3/25

=========================================================

今週の目次

◆連載コラム:第十八回 「信頼と信仰」  
 
◆編集後記

〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜

◆連載コラム: 第十八回 「信頼と信仰」

 

 ある講演会場で、ラム・ダスが話した師の逸話がある。


「わたしの師が、ある家を訪ねたときのことです。その家の義理の兄弟は、 サドゥー(インドの放浪する行者)はよくない、と思っていました。 それで、マハラジ(師のニックネーム)が家に来ると聞いて、 サドゥーなんかに会いたくないといって、奥の部屋に行ってしまいました。 マハラジが来たとき、その家の人たちはみんなリビングルームで待っていました。 ところが、マハラジは、まっすぐ奥の部屋に行くと、 『サドゥーはよくない』と言ったのです。 そのあとで、彼はマハラジに帰依するようになりました」



  かつてラム・ダスは、 「どのような訓練をすることによって、自分を 信頼trustへとひらいていけるのか」と問われて、 次のように語ったことがある。



「自分を信頼へとひらいていくためには、あなたと信頼するものとが、 十分深く溶けあうような経験に、あなたをつれていく必要があります。 信頼というのは、信仰と同じように、 究極的には二元的なものではありません。 それは溶けあった経験から起こってくるものなのです」



  ふつう、私たちがあるひとを信頼するというときには、たとえば、 自分のことを傷つけないかぎり、そのひとを信頼するというように、そこには条件付けがある。 しかし、私たちが、二元性を超えて、ひとつに溶けあうという経験をすると、 そこからもどってきたときに、 それを信頼するかどうかを決める必要がなくなる、とラム・ダスはいう。



「全面的な信頼というのは、最初に溶けあう経験があって起こってくるものです。 たとえば、わたしは自分が師と分離していない、 という経験をしたことがありました。 すると、わたしのなかで何かが起こり・・・非常に深い何かです・・・ 戻ってきたときに、もはや信頼すべきか否かを決定する必要はありませんでした」



  ラム・ダスは、対象とひとつに溶けあう経験をもたらす訓練のひとつとして、 チャンティング(聖なる言葉をメロディーにのせて何時間も歌うこと)をあげる。 チャンティングでは、最初のうち、繰り返される歌詞の意味を考えたりするが、何時間も 歌っているうちに、そのような考えはどこかにいってしまう。 そして、ただ歌っているだけになり、音そのもののもつ美しさに気づかされるという。



「さらに、しばらく歌っていると、もっと深くなっていき、 あなたのハートが歌っているようになります。 本当のバクティ(信愛)がはじまる瞬間があります。 あなたは内側から歌います。 二元性が終わり、あなたは歌そのものになるのです。 そして、愛のより深いクオリティーのなかへとはいっていくのです。 のちに、あなたは疑いやもろもろのものがある二元的な世界にもどってきます。 しかし、そこに触れたという事実が、あなたに信頼をもたらすのです」  



  このような訓練は、その方法にたいする信頼と、 最愛の存在にたいする信頼の両方をもたらす、とラム・ダスはいう。 彼自身、1968年以来、マントラを唱えながら、 数珠をまわすという訓練を行ってきた。



「最初の頃、何年ものあいだ、わたしは眠るときに数珠を胸において寝ました。 そして、目が覚めるとマントラにはいっていきました。 夢から出たり入ったりしながら、わたしは常にそうしていました。 わたしの信頼は非常に強かったので、 もし何かにゆさぶられると、わたしは即座にマントラにもどりました。 信頼があることによって、その技法が効果をもたらします。 いったんマントラがはじまると、それが効果 を発揮するのは、 たんに時間の問題になります」



  またラム・ダスは、信仰というものも、本来、二元性を超えたものであるという。 しかしながら、英語には、同じ「信仰」という言葉でも、 ビリーフbeliefとフェイスfaithという2つの言葉があり、 これらの2つの言葉の違いを次のように語る。



「ビリーフbeliefというのは、マインド(頭の意識)のものです。 ビリーフは寒い夜にあなたを暖めてはくれません。 あなたの愛しているひとが死んだとき、あるいは、 あなたが死に近づいていて、あなたのマインドが崩壊しはじめているとき、 そのようなときにビリーフは機能しません。



  それに対して、フェイスfaithは、あなたが真実とむすびつく方法です。 ところが、それは、あなたの疑いや思考の習慣などでおおわれています。実際には、フェイスを養うことはできませんが、 あなたが、自分のハートをひらきつづけて、マインドを静め、 存在のより深く、より高い場所へとつながっていくと、 知性をとおしてではなく、お腹の底からそれを感じはじめるようになります」



  ある日、ラム・ダスがカリフォルニアの自宅にいたとき、 朝、外の垣根を見ると、垣根全体が美しい青い花におおわれていた。 その花々は、うっとりするような青い色をしていたので、彼は魅せられてしまった。 それから、となりの友人の家に行き、美しい青い花が咲いていることを話して、 しばらくともに時間をすごし、午後になって二人で外へ出た。 ところが、彼がその青い花を見せようとして、 垣根のところまで友人を連れていくと、その青い花はひとつも咲いていなかった。 なぜなら、その花は朝顔だったからだ。



  ラム・ダスは、フェイス(信仰)については、 この朝顔の性質を理解することが大事だという。なぜなら、 至福や恍惚感というものは、朝顔のように、 一時的なものであって、永遠につづくものではないからだ。 朝顔の花が開くときがあれば閉じるときもあるように、 至福や恍惚感とともに、絶望や虚無感というものも存在する。



「あなたは、つねに賢くクリアーで、 神とつながっているという感じをもとうと自分に要求しないほうがいいでしょう。 こういった経験というのは、マインドが、たんに形の宇宙でたわむれているのです。 あなたが、親密さやあたたかさ、信愛のすばらしいクオリティーを感じているときに、 もっと深くはいっていくと、そういったものの背後にある場所を見つけます。 ですから、あなたが憂鬱さや切り離された感覚、空虚さを感じているときにも、 そういったものと一緒に座って、その背後にある場所を見つけ、 そこにたたずんでください」



  経験や体験それ自体は、ひとつの波のようなもので、やってきては消えていくものにすぎない。 それに対して、信仰faithは、いいとか悪いを感じる場所の背後にあるものであり、 ポジティブなものでもなければ、ネガティブなものでもない。



「信仰faithが経験にしがみついているかぎり、あなたは、困難な道を歩むことになるでしょう。 なぜなら、あなたは自分の経験を変化させることを怖れ、つねにゆれ動くからです。 しかし、信仰faithが経験の背後にある何かと関係していることを認識するようになると、 あなたは、それがただ在ることだ、ということがわかるようになります。 それは・・・ただ在ること、なのです」


 
〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*


◆編集後記



 先日、「ラム・ダス フィアス・グレイス」の映画監督、 ミッキー・レムリ氏と会う機会がありました。 彼は、ニューヨークを本拠地にして、ダライ・ラマなど いくつかのドキュメンタリーを手がけてきた人物ですが、 ラム・ダスとは、もう二十五年来の知り合いで、 これまで何度も映画を撮ろうと声をかけてきました。



  しかし、そのたびにラム・ダスからは「いまはまだ」と言われ続けてきました。 そのラム・ダスが脳卒中の発作を起こしたあとで、 病院にお見舞いにいったレムリ氏が、もう一度映画の件を話すと、 今度は「いいよ」と一言。それから、撮影が始まりました。 撮影したフィルムは、延べ60時間。実際の映画は93分ですが、 何本ものシリーズが作れるほどフィルムがあるそうです。



  この映画は、ラム・ダスの半生を描いたものですが、 とくに現在のラム・ダスに焦点をあて、彼が、 人生をゆるがすほどの出来事だった脳卒中の発作や老いを どのように恩寵とみなして生きるようになったかが語られています。 また、彼と同じように、ある日、突然起こった破局的な出来事によって 打ちのめされながらも、再び生きることをはじめた人びとの様子も描かれています。



 2002年の5月から7月にかけて、アメリカでは全国各地で上映される予定です。


〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*〜*


●片山が共訳した『愛という奇蹟』(ラム・ダス編著)については、パワナスタ 出版のホームページをご覧ください。

http://www.pawanasuta.com/


-------ご意見・ご感想はこちらまで!--------------------------


□発行者 片山邦雄 mailto:kkatayama@gol.com
□関連ウェッブサイト http://www.pawanasuta.com/katayama.html
□発行システム インターネットの本屋さん「まぐまぐ」  http://www.mag2.com/
□マガジンID 0000058263


---------------------------------------------------------


●無断転載・プリントアウトの配布などはご遠慮ください。
●転載・掲載の際は事前にご連絡ください。


---------------------------------------------------------